2012年6月30日土曜日

今しかできない作業

授業に使う事例報告の資料を作成している時、写真を見ながらある利用者さんを思い出したので書きます。

AさんはALSを患い、症状が急激に進行していく中でもずっと通所リハに通い続けてくれました。

Aさんは以前に書いた「義妹の為のアルバム作り」をした事例の義妹の方です。

AさんはALSが初期段階の頃からずっと通ってくださっていました。

何をするにもお姉さんと一緒でした。

Aさんはシングルマザーなのですが、娘を育てるのもお姉さんと一緒にされ、3人は本当に仲の良い家族でした。

元々お姉さんと一緒に商店をされており、仕事中心の生活をされていた方なので、通所リハでお姉さんと一緒に商店を開いてもらったりなど、様々なことをしました。

でも、病気が進行して1日の大半をベッドで過ごし、移動はリクライニング車椅子、常時酸素が必要な状態となりました。

娘さんもお姉さんも延命措置を望んでおられなかったので、Aさんの命はそんなに長くないことはわかっていました。

今、僕らには何が出来るだろうとずっと考えていました。

今しか出来ない作業があるのではないかとずっと考えていました。

そして今までAさんや、お姉さんと話したことを思い返していました。

すると、「今まで仕事ばっかりしてきたから趣味はないけど、楽しかった想い出は家族や婦人会で行った温泉旅行だよ。」と以前話されていたのを思い出しました。

僕はAさんに「もう一度、家族で温泉に行きませんか?」と聞きました。

Aさんは最初、わずかにですが首を横に振って無理だという意思を示していましたが、「もし行けるのなら行きたいと思いますか?」と聞くと、小さな声で「行きたい」と答えられました。

一言話すだけでも苦しいはずなのに、Aさんは反応してくれました。

僕は絶対に成し遂げようと心に誓いました。

ただ、Aさんの体力では温泉に浸かることは難しいということと、介助者の人数、環境が整った施設がないことから、足湯にしました。Aさんにも説明し、了承を得ました。

次に通所リハのスタッフにプロジェクトを立ち上げることを宣言し、プロジェクトを進めて行きました。

詳細には語りませんが様々な障壁がありました・・・・・仕事で唯一、号泣しました。(今ではあの障壁のおかげで、話し合いの進め方を学べたので感謝しています。)

色々なことがありながら、お姉さん、娘さん、通所リハ全スタッフの力を借りて足湯プロジェクトを実行することができました。





かなり風が強い日でしたが、Aさんもお姉さんも娘さんもスタッフも皆笑顔でした。

普段しんどさなどからほとんど無表情なAさんの笑顔が忘れられません。

Aさんは亡くなる数日前まで通ってくれました。

Aさんが亡くなった後、娘さんが「すごくきつそうにしていた時にもここへは必ず行くと言っていました。亡くなる時大きく息を吸って笑顔で逝きました。ありがとう。」と伝えに来てくれました。

作業は一期一会。

今しかできない作業」があると思います。

そこに焦点を当て、介入するのは作業療法士の役割だと思います!

作業療法士の役割。この責任の重さを感じながらクライエントと関わり続けます。

2012年6月27日水曜日

遅ればせながら宮崎学会

大分遅くなりましたが、宮崎学会行ってまいりました!

写真を見返すと9割がADOCでした♪

相変わらずすごかったです!人!人!人!!!

まず一日目のポスター発表。








発表されたtomoriさん、琉球OTさん、侍OTさんお疲れ様でした。本当に熱い発表でした。

なぜに3人の発表が多くのひとの心に響くのか?

聴きながら答えが見つかりました。

それは3人とも発表の中心にはクライエントがいるからです。クライエント中心の想いが込められているからです。

それが自然に伝わってきました。ただただ感動しました。


そして2日目のADOCアピール企画。


またまた立ち見が出るほど大盛況でした!



















やはりアピール企画でも皆さんの発表最高でした。感動しました。


会場の皆さんの心が動いたと思います。素敵でした。


そして、ADOCに興味を持っている作業療法士がたくさんいることにも感動しました。

OBPに興味を持っておられるOTがたくさんいるってことですね♪


そのようなOTさんはぜひADOCを試されてみるといいと思います。


試されるとわかると思います!


作業療法士の立場が、治療者からパートナーとして可能化をする人へ変わることを。


そして、クライエントとOT共に幸せを感じることを。




中途半端な終わり方ですいません。とにかくADOCプロジェクトのメンバーと語り合って、さらにOTが大好きになった学会でした。

2012年6月13日水曜日

実習を終えて

先日、長期臨床実習Ⅰ期目を終えた学生さんが帰ってきました。

いい顔をしていました。たくさんのことを学べたんだと思います。

全国のバイザーの皆様本当にありがとうございました。

どんな介入をしたのかな?と提出してもらったレポートを読ませてもらいました。

COPMが結構使われていました。いい流れですね♪

ただ、COPMで挙がった作業に対して、作業遂行要素のみに介入しているのがおしい!


もう一度トップダウンの評価・介入とOBPについて一緒に復習しようね。

そしてレポートを読み進めていくうちに共通点が・・・

まずタイトル「○○を発症後○○を呈した症例」

そしてOT評価の記載順序

1、第一印象
2、身体機能評価
3、認知機能評価
4、ADL評価
5、基本動作

・・・決まってるんでしょうか?(僕が知らないだけならすみません。)

僕はバイザーをした時、学生さんにトップダウンの評価を経験してもらっていました。そして、レポートの書き方もそのままトップダウンで記載するようにしていました。

その方がクライエントの全体像をつかみやすいですよね。検査・測定の意義もわかりやすいですし。

○○のような人生を歩まれてきた方で、○○という作業ニーズがある。その方は現在このように過ごされていて、このような作業のやりにくさがある。やりにくさの原因は○○(身体機能・精神機能等々)です。

身体機能から読み進めていくよりも、事例のことがイメージしやすくありませんか?

作業療法士はトップダウンで評価してトップダウンでレポートを書く。どうでしょうか?

あと、かなり少数ではありますが、作業ニーズを聴取していないレポートがありました。デマンドさへないものも・・・。

いわゆるボトムステイと呼ばれるものですね。

僕はトップダウン・ボトムアップ両方の視点が必要なのはわかっているつもりです。

しかし、ボトムステイの評価・介入の場合は、作業療法士の独自性が失われ、作業療法の力を発揮できないように思います。

ボトムステイを実行され、教えておられるバイザーの先生方は作業療法士のアイデンティティが揺らぎ、きっと悩んでおられることでしょう。(決めつけてすみません。でも、歴史が物語っています・・・)

作業療法士とは誰のために、何に焦点を当て、何をする職業か?

もう一度皆で作業療法を問い直しませんか?



作業療法士が健康に寄与できる職種となるために、そしてクライエントの幸せのために臨床と教育が連携して頑張っていきましょう!

2012年6月3日日曜日

希望ある未来への決心

本日、看護師の友達に僕が目指す事業のプレゼンをしました。

途中から彼女の目には涙が溢れていました。

彼女は現場で行わざるを得ない身体拘束に傷ついていました。

身体拘束がルーチン化されている現状に思い悩んでいました。

看護師のアイデンティティが崩壊していました。

看護師に失望していました。

そして自分自身を見失い、自分自身に失望していました。

身体拘束は患者さんだけではなく、それを行った人も傷つけます。

「こんなことまで行うようになってしまった」と自分を責めます。自己有効感を下げます。



患者さんの安全の為、患者さんを守る為。

もちろんそうだと思います。看護師さんが一生懸命なのはわかっています。責めて良いとは思いません。

でも、本当にそれしか方法がなかったのでしょうか?

もうアイディアが浮かばないほど話し合ったのでしょうか?

試行錯誤してみたでしょうか?

患者さんが暴れてしまう理由を考えたでしょうか?

今身体拘束が行われている方の中で、必要ない方もいるのでは?と話し合ったでしょうか?

身体拘束はこのようなプロセスを踏んでの最終手段であると思います。

彼女の現場を知らない僕が言えることではないかもしれません。

でもこのプロセスを踏んでいれば、彼女がこんなに傷つくことはなかったかもしれません。

1人で思い悩むこともなかったかもしれません。

アイデンティティが崩壊することもなかったかもしれません。



心優しく、患者さんのことを深く考える人ほど疲れきり辞めていくような社会を変えていかなければなりません。

彼女が看護師という職業にもう一度、誇りとやりがいをもって働ける職場を作ること。

それが社会を変える第一歩になる!そのように思いました。

彼女と一緒に働けるかどうかはまだわかりませんが、どこで働こうとも嬉し涙が流せる社会を創る努力をしようと心に誓いました。

彼女に送りたい言葉  「いちゃりばちょーでー」

もう1人で苦しまないで欲しいな。