2011年11月19日土曜日

母校での講義

先日母校で講義をしてきました。

テーマは「デイケアの作業療法」

臨床推論実習前の3年生に講義をさせていただきました。

僕が設定した目標は「地域・維持期の作業療法を知る」「作業療法を好きになる」としました。

沖縄を出発する直前、師匠に講義のコツを聴いて臨んだ初講義でした。

正直、すべったらどうしようかとドキドキでした・・・・・。

居眠りする子や、お化粧する子がいたらどうしようかと思っていました・・・・・。(お化粧する子がいたら、ネタとしてはおいしいですが♪)

しかし、さすがはYMCA!笑うところもわかっており、真剣に聴いてくれる子ばかりでした。

僕が、本講義の効果判定にもなると思い、用意した質問は、

『ある利用者さんから質問をされました。「急性期、回復期ってあるでしょ?ここは何期かって学生さんに聞いたら維持期だって。維持期はどんなところ?」皆さんならこの方にどのように説明しますか?』

というものでした。これを講義前と講義後に聞きました。

講義前の学生さんは、「病状が安定している現在の状態を維持しながら生活する時期」簡単すぎますが、このような回答が多かったです。

しかし、講義後は、「利用者さんのやりたいことや、やらなければならないことが、どのようにしたらできるのかを一緒に考える時期」「利用者さんが望む人生を歩めるように支援する時期」などなど。

このように、機能面に焦点を当てた回答から、クライエントの作業ニーズに焦点を当てた回答へと変化してくれました。

みんな素直でいい子でした♪

拙い講義でこんなにも理解をしてくれたことに感謝です。本講義の目標は達成した・・・と思います♪

講義の感想も「作業療法士は素敵な職業だと思いました」「作業療法最高!」「クライエント中心の作業療法を提供できるOTになりたい」「ごきげんに行ってみたい」などなどたくさんの嬉しい言葉をいただきました。

学生のみなさんが、今後実習で色々な体験をしてさらに成長するのが楽しみです。またその時には作業療法について語り合いたいと思います。

やはり作業療法の魅力はトップダウンとOBPだということを学生さんの反応を見ながら再確認しました。

2011年11月7日月曜日

3きろめーとるの恩返し

平成23年11月6日(日曜日)


Kさんの想いが詰まった尚巴志マラソンに参加しました。

朝6時に職場に集合してから会場に向かいました。

車の中でKさんは、やんちゃだった中学生の時にお世話になった先生に電話したことを話してくれました。先生にマラソンへ参加することを伝えたということでした。

すると先生は「あなたの頑張りを聴いて勇気と元気をもらった。私も来年トリムマラソンに挑戦する!」と話してくれたそうです。

「来年は先生とトリムマラソンに出ないとな」とKさんは笑顔で話してくれました。

会場に着き、ウォーミングアップなどするわけもなくゆっくりと過ごし、ついにスタートの合図が10時5分前にならされました。

少し出遅れたスタートとなりましたが、しっかりとした足取りで歩き始めました。


Kさんを支えるごきげん介護士さん。

夜遅くに集まり、練習も3人で行っていました(うちの介護士さん本当に素敵な人たちばかりなんです)。

そのような3人の文脈が後姿から伝わってきて、僕は3キロの間ずっと感動にひたっていました。
折り返し地点を過ぎて重くなる足、痛くなる腰、反張膝が少しずつ著明になっていきましたが、一向にペースは落ちませんでした。

僕は何回も「大丈夫ですか?きつくないですか?」と問いかけましたが、Kさんは「大丈夫!」と一言返すだけでした。

本当はすごくきつかったと思います。痛かったと思います。でもKさんは歩くことをやめませんでした。

Kさんを支える介護士さんにはKさんの状態がよくわかっていたのだと思います。「Kさん気持ちでいきましょう!」「もちろんきついですよね・・・でもいけますよ!」と共に頑張ったからこそ言える、そんな言葉を絶妙なタイミングでかけたこともKさんの力になったのだと思います。

Kさんは一言も弱音を吐くことなく3km走りきりました。

制限時間はだいぶ過ぎてしまいましたが、最後まで走りきりました。

僕は感動して言葉が出ませんでした。



Kさんにゴールした感想を尋ねると、

「正直、制限時間内に入れなかった悔しさが一番。」


「今まで過去の栄光だけを見ていたが、今回現実が見れた。これからは前を見て這い上がる番だ!」


「次はもっと練習をして制限時間内に入れるようにしたい。」と話されました。


そんなKさんの目は赤く潤んでいました。悔しさだけではない涙だと思います。



そしてこの後少し休憩していると、沖縄タイムスの記者にインタビューを受けました。

そのインタビューの中でKさんは

「中学時代やんちゃな自分を立ち直らせてくれた先生にやる気・元気・勇気という言葉をもらった。病気(脳梗塞)になった時もこの先生の言葉が支えてくれた。」

「そんな先生や友人に恩返しがしたい。」

「やればできると伝えたい」

と話していました。

きっと先生、野球仲間等の友人に、元気になったところを見せたいという想いと共に、「片麻痺になった自分」という障がいありきの存在ではなく「自分は片麻痺という障がいを持っている」というように、Kさんという存在は変わっていないということを、マラソンに参加するという形で伝えたかったのだと思います。

また、Kさんは同じ障がいを抱えた方たちへのエールにもなると考えていました。



普段から冗談ばかりで多くを語らず、真剣な言葉ではめったに伝えてくれない不器用なKさんらしい恩返しの表現方法でした。

そんなKさんに僕たちは皆、「やる気・元気・勇気」をもらいました。

きっと多くの方にもKさんのエールが伝わったと思います。






2011年11月3日木曜日

忘れられない手紙

「人生はね、宝探しなの。皆ね、宝物を探して生きているんだよ。」

その言葉が思い浮かんできました。

2005年(平成17)9月5日よりごきげんさんの通所リハビリテーションとの出会いが始まりました。

最初は後遺症右半身麻痺と言葉を失う。失語症だったので何にもわからない。

「人生これで終わったと思った。」

そんな日々でした。

しかし、回復への道を開いたのがたくさんの仲間との出会い、そしてスタッフの温かい励ましと手厚い介護に支えられたことでした。

今は自分も立ち直り、優しさで生きていく宝物を見つけました。

6年間一緒にリハビリテーションに通った皆さん。そして職員の皆さまからいただいた宝物を大切にして前向きに生きていきます。

本当に長い間お世話になりありがとうございました。

皆様もお身体に気をつけてごきげんよ。



これは、先日介護度の変更によって、他事業所へ移られることが決まった利用者さんからいただいた手紙です。

非利き手で一生懸命書いてくださいました。6年間の努力が伝わってくる素晴らしい字でした。

通所リハスタッフに読み聞かせながら、涙をこらえるのに必死でした。

どこへ行かれてもあなたらしい幸せな人生を歩めるよう祈ります。

そして、そのような社会となるように僕たちは努力します。

2011年11月2日水曜日

恩師の遺志を受け継ぐ為に~第1回YMCA作業療法学術集会~


10月9日(日)に母校で第1回YMCA作業療法学術集会が無事行われました。

想い起こせば同期生で集まって学会を開こうと言って始めたのが5年前でした。

僕の印象でしかないですが、OTとして2年目から3年目という時期は何か分かれ道のような気がしていました。ファシリテーションテクニックに固執していくひと・業務に慣れ、ただ坦々と業務を遂行するひと・クライエント中心の作業療法を実践するひとなど、全ての要素のバランスがとれていればいいのですが、就職した環境によってどこかに偏っていってしまう。そんな危険性を含んだ時期のような気がしていました。

本当に幸せなことに、当時から僕は師匠たちのおかげで様々なことをバランスよく学ばせていただいていました。作業科学・CMOP・MOHOなどのメタ・大理論からファシリテーションテクニックのことまで幅広く学ぶ機会をいただいていました。だからこそ、尚更理論の大切さを感じましたし、OBPの大切さを感じることができたように思います。(言うまでもなく、現在も勉強中です。)

こんな気持ちを同期生と共有したかったし、OBPの魅力をもしまだ知らない同期生がいたなら伝えたい、一緒に成長していきたいと思ったのが同期生学会の動機でした。

このような同期生学会に賛同してくれて、毎年多大な協力をしてくれたのが、亡くなった恩師のK・S先生でした(ブログの一番最初に書いた方)。

毎年「お前たちはクライエントの為に闘っているのか?」と説教してくれました。本当にストイックにクライエント中心を貫く先生でした。

そんな先生の生き様ともいうべきクライエント中心の作業療法を、僕たちは同期生だけでなく在校生にも伝えていけれたら母校への貢献になるのではないかと思い、僕のところへ来た実習生を通じて広報していました。そのような小さな働きかけのみだったので、毎年集まる人数は10人ほどでした。そんな時、もう1人の恩師H・S先生に「すごくいい取り組みだから、同窓会を通じてもっとたくさんの人と共有したら?」という一言をいただき、今回の全卒業生・在校生に働きかけた学術集会へと繋がりました。

昨年まで10名程だった参加人数が、今回はなんと42名に増加しました。参加人数は関係ないと解っていながらも嬉しい限りでした。その中には、学術集会開催のきっかけとなる一言をくれたH・S先生も夫婦で参加してくれました。

前置きが大分長くなりましたが、学術集会は下記のプログラムで行いました。

1.開会の挨拶
2.特別講演 亡くなった恩師の奥様
→夫の死を作業療法士の視点で捉えて発表いただきました。亡き夫の作業・道具によって亡き  
  夫と繋がる という大変興味深い、貴重な体験をお話いただけました。
3.特別講演 K先生:「作業療法におけるコミュニケーションスキルについて」
→お笑い芸人やアイドルの話を交えた楽しい講演の中に、密かにコーチングなどのテクニックも 
入っていて、本当に楽しい講演でした。「クラスでいちばんのことが 1つでもあったとしたら 世
界一になれるかもしれないよ できちゃうかもよ」
4.演題1 Fさん:「仕掛けから見えてくること」
→日本一有名な大規模デイサービスY村のシステムの中で、Fさんが作業療法士としてどのよう
に考え、介入しているのかがよくわかる素敵な発表でした。作業科学の視点が満載でした。
5.演題2 Fさん:「回想コミュニケーションを通しての作業慮法介入」
→老健でFさんが介入した事例を発表してくれました。認知症の陽性症状が著明だった方の作業 
を見つける為に回想コミュニケーションというツールを使って作業を導き出し、作業を用いて介 
入することで陽性症状が治まり事例は安定したという素晴らしい発表でした。
6.特別講演 T先生:「学問のススメ」
→教員をしながら大学院に通われて博士号をとろうとされている先生です。ストイックに勉強に打
ち込まれる姿に心打たれました。自分はまだまだ勉強が足りないことを教えていただけました
し、勉強に対するモチベーションを高めてもらいました。
7.演題3 Wさん:「終末期のリハビリテーション」
→Wさんの持つたくさんの人脈等の資源を活かし、クライエントがクライエントらしくあり続ける為に周囲を巻き込んでいく様子に圧巻でした。クライエントの素敵な笑顔が印象的でした。
8.演題4 Aさん:「通所リハにおけるCOPMの導入過程で見えてきたこと~向かうべき方向・目的・活用について~」
→COPMを用いて他職種とクライエントの目標を共有すると共に通所リハとしての効果判定もしようと試みているそうです。クライエントの作業ニードの可能化に向けて全スタッフがそれぞれの専門性を活かして介入するという理想の形がそこにありました。
9.演題5 H(私です):「クライエント中心の作業療法~ADOCの紹介~」
→今回、ADOCプロジェクトのメンバーとしてADOCの紹介をしてきました。ご協力いただいたtomoriさんありがとうございました。発表するたびにADOCのことをより深く学べるように感じます。スライドの中で琉球OTさん、侍OTさんの事例を紹介させていただきました。本当にありがとうございます。作業療法士らしい作業療法とはこういうことなんだなといつも学ばせていただいています。皆さんにうまく伝えられたかどうか心配ですが、スライドを見るだけでADOCの魅力は十分伝わったと思います。
10.閉会の挨拶

このような内容で第1回YMCA作業療法学術集会は幕を閉じました。

本当にすっごく楽しかったです!内容濃かったです!皆、クライエント中心で作業に焦点を当てた介入をしていたので、ほぼ徹夜の状態なのにずっとテンションが上がりっぱなしでした。

余談ですが、琉球OTさんのブログを読んでOTになる道を選んだ学生さんに出会いました。なんか不思議な繋がりを感じて感動しました。

K・S先生、天国から喜んでくれているでしょうか?先生の遺志は受け継がれていってますよ!